『花橘亭』「平安時代好きの京都旅行記」秋の京都風俗博物館




風俗博物館

展示期間:2005年 10月1日(火)〜11月30日(水)
文学作品にみる名場面1
『更科日記』菅原孝標女 著

土忌みの宿、くしき猫のおとずれ

土忌みの宿、くしき猫のおとずれ
左:姉   右:菅原孝標女

袿姿(五衣:花橘かさね   袿:萌黄地白海賦文)
菅原孝標女(妹) 袿姿(五衣:女郎花かさね  袿:薄黄地白海賦文)


菅原孝標女  五月ばかり、夜ふくるまで物語をよみて起きゐたれば、来つらむ方も見えぬに、猫のいとなごう鳴いたるを、おどろきて見れば、いみじうおかしげなる猫あり。

(それは五月ごろのことだったが、夜の更けるまで物語を読んで起きていると、どこからやって来たのか見当もつかないが、猫がまことにのどやかに鳴いている。はっとして、よく見るといかにもかわいげな猫がそこにいる。)


<「新編日本古典文学全集26 和泉式部日記 紫式部日記 更級日記 讃岐典侍日記」小学館発行より 原文・訳 引用>
猫


 この猫を姉妹でこっそり飼うことにしたのでしたが、とても人馴れしており姉妹にぴったりついてまわるのでした。
 
 姉が病気をすることがあって、猫を北面の部屋に置いていましたが、猫はうるさく鳴き騒ぎました。すると、病気で臥していた姉の夢に猫が現れ、その猫は実は姉妹が親しくして亡くなった侍従大納言の娘の生まれ変わりで姉妹が自分をしたってくれたその縁で姉妹のもとに来たのに、最近は側にも置いてもらえないことを悲しんでいると訴えた夢を見ました。
 それ以後、姉妹はこの猫を北面にも出さず、大切にお世話したというエピソードです。



文学作品にみる名場面2『堤中納言物語』へ




『花橘亭』「平安時代好きの京都旅行記」秋の京都風俗博物館