『花橘亭』「平安時代好きの京都旅行記」秋の京都風俗博物館




風俗博物館

展示期間:2005年 10月1日(火)〜11月30日(水)
文学作品にみる名場面3
『枕草子』清少納言 著 

“香爐峰の雪は簾を撥げてみる”

枕草子 “香爐峰の雪は簾を撥げてみる”

『枕草子』第280段より

雪が大変降り積もった朝  雪のいと高う降りたるを、

(雪がたいへん深く降り積もっているのを、)


御格子をおろして、皇后定子に伺候している女房たちが集まって話をしていると・・・
「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ」  「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ」と仰せられるれば、御格子上げさせて

定子様が「少納言よ。香炉峰の雪はどんなであろう」と仰せになるので、女官に御格子を上げさせて)
御簾を高く上げる清少納言 御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。

(御簾を高く巻き上げたところ、
定子様はお笑いあそばす。)



<「新編日本古典文学全集 枕草子」小学館発行より原文・訳引用>
お笑いになる中宮定子


 教科書などにも取り入れられている有名なシーンですね♪(^^)

 このエピソートは、唐の詩人・白居易の『白氏文集』巻十六「香炉峰下に新たに山居を卜して草堂初めて成り、偶(たまたま)東の壁に題する五首」のうちの第四首目に、

 遺愛寺ノ鐘ハ枕ヲ欹(そばだ)テテ聴キ
   香炉峰ノ雪ハ簾ヲ撥(かか)ゲテ看ル。


という部分があり、皇后定子は“雪を見たい”という意思を「香炉峰の雪」という言葉で清少納言が察知するかを試されたのでした。



皇后定子 :小袿姿
(五衣:雪の下かさね 袿:濃色白袍鸚鵡文 小袿:白梅梅の折れ枝蝶鳥文)
清少納言 :女房装束
(五衣:紅の薄様かさね 袿・黄地白小葵文 唐衣:白地萌黄乱唐草文)




 思いっきり余談になりますが、平安時代、遺愛寺ノ鐘ハ枕ヲ欹(そばだ)テテ聴キ香炉峰ノ雪ハ簾ヲ撥(かか)ゲテ看ル。を踏まえた漢詩を詠み、大宰府で寂しい生活を過ごした人物がいました。

 ご存知!菅原道真です。

 菅原道真は、都府樓纔看瓦色 觀音寺只聽鐘聲 (都府の楼にはわづかに瓦の色を看る、観音寺はただ鐘の声をのみ聴く) と詠みました。菅原道真が過ごした大宰府での邸宅「府の南館」からは、大宰府政庁(都府楼)の瓦が少し見え、観世音寺の鐘のみが聞こえるといった状況でした。



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